副長三十題   配布元 副長三十題

一  御法度
「法度で縛る、か。如何にも君の考えそうな事だねぇ」
「アーアーそうですよ俺ァ聡明な山南ケースケ大先生とは違って無学ですからねェ」
「…君の案にしては悪くない、と思ったんだが」
「う、うるせェ…」


二 斬
屍山血河を築いて生きる。


三 世界征服
ほんとうに手に入れたいのは、


四 玉
「FCの通販でレプリカを買ってみたんだが、これがまた惚れ惚れするほど綺麗な色をしていてね…」
「……で?」
「何だい」
「そいつァ何かの役に立つのかっつってんだよ」
「綺麗だからいいじゃないか」
「そんなモン叩ッ返せ!! 漬物石の方がまだ有益だ!!」
「…田舎者は美を解する雅な心を持ち合わせていないようだねぇ、何かといえばすぐに損得勘定だ」
「……お前、変な壺とか買わされるタイプだろ」


五 褌
「だらしないな」
「ンだよ」
「そんな格好で座ってるから下帯が丸見えじゃないか。これだから田舎侍は困るねぇ、品位というものがまるでない」
「その田舎モンの小汚ねぇケツに突っ込むのが楽しいってんだから結構なご趣味でございますねぇ」
「お上品な食事に飽きたんだよ、よくある話さ」


六 士道
まっすぐに。


七 有給休暇
「うるせェ俺の前で玉とかマジックとか言うな。サイン会だか何だか知らねぇけどさっさと行っちまえ」
鬼の副長、ご機嫌斜め。


八 大嫌い
だいきらいだとささやいたそのくちびるでキスをする。


九 侍魂
腰に下げた二尺八寸。我が魂。


十 色恋沙汰
それが恋だと、気付きもしなかった。


十一 散華
戦場で散れるのならば、本望だと。


十二 黒髪
指先に、絡めて。


十三  刀
いつか、きみの刃がわたしをころす。


十四 石田散薬
「こいつァ秘伝の薬でな。ちょっとやそっとの傷ならたちどころに治る、ってェ代物だ。つーかアレだ大抵のモンに効くぜ、莫迦は治せねぇけどな」
「ああそれで君の頭の悪さはいつまでたっても治らないわけだ」
「テメーの性格の悪さも一向に治らねェけどな」


十五 修羅
生きるために殺す。殺すために生き続ける。


十六 切れる男
「毎度の事ながらオメーの作戦はえげつないよなァ」
「手持ちの駒で最大限の戦力を叩き出す…指揮官として当然の話じゃないか。異論があるなら忌憚なく言いたまえ」
「褒めてんだぜ、これでも」
「…国語は苦手かい?可哀想に」
軍議は踊る、されど進まず。


十七 椿油
椿油と、煙草の香り。土方の、匂い。


十八 狼
組み敷かれてなお、喉笛を喰い千切る機会を狙う。
誇り高き野性。


十九 一刀両断
何でも斬ってご覧に入れましょう。


二十 眼鏡
世界を隔てる境界線。


二十一 煙草
マッチを擦る。
眼を細めほんのわずか首を傾げ火を点ける。
その酷く無防備な横顔を、見ていたいと、思う。


二十二 敵前逃亡
「逃げるな」
互いを縛る魔法の呪文。


二十三 誠
「局長があんなアホだと放っとけねぇだろ」
「…それで今の今まで腐れ縁か、おめでたいねぇ」
「首突っ込んだオメーも似たようなモンじゃねぇか」
『誠』の旗のもとに。


二十四 甘酒
酔うて候。


二十五 浅葱色
「あまりいい趣味だとは言えないな」
「珍しく意見が合うじゃねぇか」


二十六 春の月
「ホントは、さ。言うほど嫌いじゃねェんだよな、」
花霞に淡い満月。
その優しい光。
…好きなのだと、思う。他のどの季節よりも。
「…いかん…やっぱ嫌いだ…」
見上げた月はさっきと変わらぬ貌でそこに在る。
掠めるように触れた山南の唇を思い出して、眼を閉じた。
----あいつは少しだけ、ほんの少しだけ、あの月に、似てる。


二十七 天誅
地獄の沙汰も金次第。


二十八 高所恐怖症
「手でも握っていてあげようか、」
「う…うるせェ…」
「じゃあ先に行くよ」
「ま…待て…俺が落ちる時はオメーが落ちる時だ…死んでも離すな…離したらブッ殺す…」
つり橋効果とプロポーズ。


二十九 鬼
「…おう山南、ちょうどいい所に来た。キスしようぜ」
「莫迦のひく風邪はたちが悪いな、脳にも来たかい」
「うるせェ。オメーも風邪うつされて同じ苦しみ味わえってんだ」
「私は一向に構わないが、」
「……ん、」
「今この時点で息ができなくて苦しいのは君だけだよ」
「…!」
鬼の霍乱。


三十 切腹
そう遠くない未来だった。

どうしようもなく穏やかな眼をしていた。
その穏やかな眼で俺を見ていた。腹に突き立てた刃が内腑を抉る間も、ずっと。
眼を、逸らせなかった。
抱き首で綺麗に落ちた切り口から赤い液体がだくだくと流れるさまには奇妙なほどに現実味がない。
痛いほどに握りしめた指先は痺れて感覚がない。
乾いてひりつく喉は声も出せない。
やまなみ、----その4文字だけが警鐘に似た不協和音と共に頭の中で回る。

山南が、腹を切る、夢を見た。
泣きながら目醒めたのは、子供の頃以来だった。





2005/03/08 次は絵で。 タマ   配布元 副長三十題


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